虫けらのようにあしらわれながらもそれに耐え、とにかくピンポンし続ける、電話をかけまくる…。こんな営業をしなと契約は取れないといわれる商品がある。
それが飛び込みやテレアポをすることなく、紹介やクチコミだけで問い合わせが入ってくるとしたら?こんな偉業を成し遂げた山下勇雄さんにその秘密を伺う。
目次
モエル塾の営業スタイルに共感し、『あなたレター』を始めた。
― 27人に『あなたレター』の取材をしたら12件の契約になったお話を伺う前に、モエル塾に興味をもったきっかけというのは、何だったんですか?
昨年の夏くらいまでは、テレアポ部隊から翌日のアポをもらって、そこに行く、というこのスタイルでやってきたんですが、どんどんアポ件数が減ってきて、契約率も悪くなって、成果が上がらなくなってきたんです。テレアポ部隊にかかっている人件費もあるので、成果が上がらないとアポを渡せないよ、ということになって、それだったら、自分でお客さんを探してやろうと思ったんです。
そこで、以前から木戸先生のことを知っていたので、モエル塾のやり方がお客さんを引き寄せられるんじゃないかな、と思ったのがきっかけですね。
― モエル塾に入るまでに、考えたり迷ったりとかはなかったんですか?
『あなたレター』の存在を知ってはいたんですが、果たして社長さんが読んでくれるかどうか、事務員さんが受け取ってそれで終わりだと意味ないですし、法人営業の場合は送ったレターなり渡したレターが決裁者に届くかどうかというのは(見えないので、)それを考えたらモエル塾のやり方で通用するのかな、という不安はありましたね。
― 『あなたレター』本には作り方とか活用法や、法人の事例も載っていますが?
ええ。本は読みました。木戸先生はいろんな経験を積まれているので、私がする仕事にたいしても現場の非常に近いイメージを持っていただけると思っていましたので、より自分のやっている仕事に落とし込める相談ができるんではと。
― モエル塾に入る決め手となったのは何ですか?
あまり長い期間迷うのは苦手ですので、自分のひらめきを大事にしますので、真剣に考えて、何か楽しそうだ、とイメージがあったので。このやり方でうまくいったら、自分は絶対楽しいという気がしたので、決めました。
やっぱり木戸先生のスタイルが“ヒト”を大事にした営業方法だったので、そこは以前から共感、共鳴していましたし、法人でもしょせん人や個人の集まりなので。
社長さんにさえこのツールが渡って見てもらえたら、私という者を理解していただいて、いい方にいくだろうという自信がありました。あとはどうやって社長さんに届くかというところは先生に相談しながらやっていけばいい、と(モエル塾に入ることを)決めました。
いろいろ試行錯誤しながら『あなたレター』を配ったが、成果が出なかった。
― モエル塾に実際に入って、どうだったんですか?
最初に『あなたレター』を作って、「さあ、これでいける」と思いました。もう、バラ色に見えましたね(笑)。
挨拶状と『あなたレター』を持って飛び込みをやったんですけど、飛び込んだのは最初の5軒くらいで、あとはポスティングになりました。
1軒目からなかなか入れないんですよ。門前払いのトラウマがあって、まるで害虫か野良猫のようにあしらわれるイメージがあって、頑張って挨拶をして商品の話をしたんですが、「ああ、いつものか~」という感じで。あまり印象も良くなかったので、そのまま去りました。
― 最初イメージしたのは、その形でガンガン渡していこうとしていたんですか?
(『あなたレター』を)渡して話を切り出したら、「そうなの?じゃあ、見てもらおうかな」と甘い期待で言ってもらえるのかな、と。でもそういう話はいっさいなくて・・・。
2軒目からは最初の挨拶をした後は、すぐに「これ」と渡すだけ。そういう形で午前中に5軒渡しました。
午後から会うのが嫌になって、ポストに入れようと。読んでもらえればいいや、会わなくても、ちゃんと挨拶状も添えているし、読んでもらえたらいいんだ、と。
挨拶状の文面をポスティング用に“突然投函させていただいて”という感じに変えて、それで一応誠意は伝わるだろう、と(思いました)。
― 2日目も朝からポスティングしたんですか?
そうです。飛び込みは止めて、「これでいいんだ、いいんだ」と、どんどんエリアを広げていったんですけど、2,3週すれば反応があると思っていても、これだけ配っていたら、1軒くらい電話がかかってきてもいいだろう、と思ったんですが、それがない。
ツールの内容がダメなのかな、とちょこちょこ挨拶状や『あなたレター』の文面を変えながら、今度はツール作りに時間をかけるようになりました。
案内レターを『あなたレター』に挟んだりもしたんですけど、でも反応が全然ない。
― それからどうしたんですか?
違う仕事も考えました。でも行き詰まって仕事を探している、なんてことは家族には言えなくて、仕事があるかのように朝スーツを着て、マクドナルド行って時間をつぶしたり、求人誌を見たり。
あと、ノートに今の気持ちを書くのが習慣なんですけど、もうこの仕事はダメだ、やっぱり飛び込みとかしたくない、でも何かヒトとつながっていたい、ヒトの役に立つ仕事がしたい、喜んでもらえる仕事がしたい、いろいろやりたいこと希望と、やりたくないことをズラズラ書く日々だったんですよ。
でも、「収入もそのうち止まってしまう、何とかしなきゃ」と思って、誰かに相談したくなって、東京の勉強会で知り合った秋田さんに電話をしたんです。
モエル塾の仲間に相談して、“紹介”という方法をひらめいた。
― 何を相談したんですか?
木戸先生のアドバイスをいただいてやっていたけど、続かない、成果も出ない、やり尽くした、と。もっと別の営業方法がないかなと、いうことを相談しました。秋田さんから「紹介というスタイルがいいのでは」と言われて、「そうか、紹介がどんどん出ながら契約が取れたら、面白いな」と。
この『あなたレター』を紹介につなげることできないかな、といろいろ考えて、この人だと話ができる、という社長さんに会いに行ったんです。話を聞いて、それをツールに落とし込んで、その社長さんにできあがったものを持っていったら、すごく喜んでくれて。「このスタイルは使えるな」と思いました。
他にも別の社長さんのところに取材に行ったときには、話している最後の方に「電話料金を見直してくれるの? 今請求書あるから、見て」という話にもなりました。
結局その社長さんは対象外で、「社長さん、これもう契約を切り替える必要がない、今のままでいいですよ」と説明したら、「見てもらって安心した、良かった、ありがとう」と、喜んでもらえたんですよ。
― 普通だったら、がっかりすると思うんですけど、喜んでもらえたら良かった、と。
私としては、来月号の社長さんをこれでゲットした、と。契約のことは頭になくて、これでいい記事が書ける。そして「この方に次の方を紹介してもらえるな」と思ったんですね。
実際に、会話の中でも第三の人をイメージしながら聞いていたんですが、その人にその場で電話してもらって、「山下さんが取材したいから、都合つけて」と、その場でアポを取ってもらったんです。
― 次に紹介してくれる人のことを三番目というんですよね。会話の中でどういう風に意識をして言ったんですか?
その方はその社長さんにとったら親しい方で、取引先になるんですが、すごく人間関係が出来た状態で、その取引先の方からもその社長さんの評価というか、なぜこの社長さんと取引をしているのか、付き合っているのか、客観的に聞きたいな、と思ったんです。
それに、その人がどう思っているのかをその社長さんに意識してもらいながら、私と話をしたら面白いだろうな、と。
― 他の社長さんも知り合いをつないでいく時は、そんな感じで聞いたんですか?
最初はそんなに意識していなかったんですが、何人もインタビューする中でそっちに意識を持って聞いていったほうが、結果的にその方を紹介していただきやすくなりますし、それをツールに落とし込んだときの社長さんの喜びとか、いろんな広がりが期待できると思いましたんで。
社長さんへのいろんな話にすごく興味がわいて、そして仕事につながるようになった。
― インタビューをし始めて5人目で契約になったそうですが、その時はどういう気持ちでしたか?
契約をもらえたらいいな、というのはあったんですが、こっちは取材で新しい人とつながるだけでも、ほんとにそれだけでOKでしたので。
今まで、さんざん自分は新しい社長さんと出会うために努力したんですけど、ダメで、でもこんなに簡単に社長さんと知り合えるのがすごく嬉しくて、これが自分の仕事というか、最初はある意味ボランティアだったのが、楽しいな、と。
次の社長さんのことは事前にインターネットで会社の概要やプロフィールを調べて、これを聞こう、あれを質問しようと、と(準備をして行きます)。
― インタビューした人は、全部記事にするんですか?
記事にすると言って(取材に)行っていますので。今のところは、社長さんのレポートという形でしていますけれど、ちょっと多いので、今、どういうツールがいいのか、試行錯誤しているんですが・・・
― その辺からやっと、私に相談がきたんですよね(笑)。こんなにいっぱいインタビューしてたら、小冊子になっちゃいますよ、と。そこから広がっていってる感じですか?
自分の中では通信の仕事がメインですので、その仕事で広がっていくのが一番良かったんですけども、けっこう対象外の案件も多くて、お役に立てない機会も多かったんですね。
それで、いろんな社長と出会うことでいろんな悩みを聞いていたら、「この悩みだったら、この間の社長さんにつながるな」とか、その話をすることで契約になったりして。
そのことで「山下さんが紹介してくれたから。」と、手数料をもらったり。そっちの方が通信の仕事より増えてきた感じなんです。
― 山下さん、先ほどの50人くらい取材をした中で、「ここのポイントを押さえてやったらうまくいくよ」とか、「こういう失敗をしがちなんだよね」とかいうの、何かありますか?
契約を取ろうと思って回っているんじゃないので、私自身いろんな社長さんから経営のことを学びたかったですし、「そういう話をいろいろ聞きたい」とか、「この社長さんはどういう思いがあって今の会社を設立したのか」とか、そういう思いを聞くことに興味があったんです。
第三の人の話でいえば、その社長さんがうまくつながることが、また社長さんにすごく喜んでいただけることになって、その延長線上に私も自然と仕事がもらえましたので、そのスタイルがいいのかな、と。
― 今のお話を伺っていると、確かにこれを聞いている人の中には、どんな風に聞いて、どの順番で、そういうのを知りたい人もいるかと思うんですが、そこは別に知らなくてもいいんですね。
第三者の人と社長とが人間関係ができているというのは、どんな人なんだろうな、と、第三者の人が社長のことをどう思っているんだろうな、ということに興味があって、その人のことを喜ばせてあげたい、とか、この人はどんな風に仕事をはじめたんだろうな、と本当に興味があったのか、そうじゃないのかというのは、相手には伝わりますからね。
― 最後に、モエル塾に入って一番良かったことはなんですか?
自分ひとりで考えてもしょせんしれてますから、気軽に相談できる仲間がいること。
一番は木戸先生に相談すればいいんですけど、そういう意味では秋田さんというのは、私と木戸先生の関係からすると、第三の人になるんです。
そういう形で相談できるというのは、すごく有難いし、人として大事なことを教わりますので、そういうことを気づかせてくれる、ある意味修行の場でもあったりしますね。
― どうしようもなくなって止まってしまったときに、既存のお客さんに『あなたレター』を渡したら、「面白いね」と言われ、その一言がものすごい原動力になる。それを“みとめのシャワー”と呼んでいるんですけど、今日も、お話を伺っていて、まさにそうだな、と。
第三者の人をイメージする、というのは、ほんとに面白いですよね。よりいろんな人を喜ばせる必殺技だな、と思って聞きました。
山下さん、今日はお忙しい中、本当にありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございました。