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以前はコメツキバッタ営業で利益を上げ成績は右肩上がりだった。
― 以前勤めていた旅行会社では、素晴らしい成績を上げていたとか。
はい。入社してからひと通り業務を覚える期間の後に、ノルマが与えられるという形だったんですが、毎年右肩上がりで成績が上がっていって、退職するまで一度も落ちたことはなかったですね。
― どんな営業のやり方をやっていたんですか?
学校や役所、会社、地方の組織団体、自治会とか老人会とか、そういうところに全部顔を出して、お願いするんです。
「とにかくお願いします。他の会社が入っているのは存じておりますが、せめて見積もりだけでも出させてください」と。
そうすると、10件中5件くらいは見積もりさせてくれましたね。
団体旅行をやっているところを探してリストアップして、そしてローラー作戦で営業をかけて、コメツキバッタのようにお願いして、とにかく見積もりだけでも出させてもらう。
― 見積もりから契約にならないと売上げにならないですよね?
そこはどういうことをやっていたんですか?
それは簡単で、他の業者がださないような料金でやればいいんです。安さ勝負です。
そして移動手段や、宿関係の業者を叩きまくって、利益を出していました。
― それでずっと利益を上げてきた、と。それであれば、辞めることもないですよね?
完全に天狗になって調子に乗っていて、業者は自分の言うことを聞くのが当たり前(と思っていたし)、会社の先輩にも生意気な口を言うようになっていて…
でも自分の上にいた人が辞めた時、中途採用で入ってきた人がそのポジションに来たんです。やっと部下ができると思っていたのに、また違う上司ができてしまった。
そんな不満もあって、今のサニートラベルという会社に入ったんです。
新しい会社では今までの営業法は通用せず仕事がなくなった。
― それで今の会社に入った時の1ヶ月目の成績はどうだったんですか?
それが、以前の会社を円満退職したわけじゃなかったので、前の会社とは敵対関係にあったんですよね。
そこに今度は「サニートラベルです。」と営業に行っても、ろくに相手にもされない。見積もりすら出させてくれないんです。
「どこの会社ですか?」と言われるようになってしまって、これは何か違うぞ、と思い始めましたね。
業者も今まで、「高柳さん、高柳さん」と言っていた人が、ポンと手のひらを返したように全然言うこと聞いてくれなくなってしまって、値段を叩いても「それじゃ、できませんよ」と言うようになったんです。
1ヶ月目に仕事を取ったんですが、前の会社にいたとだったら60万の利益が上げられたものが、その時は5万しか利益が上がらなかったんですよ。
自分のやり方が通用しないということは頭の片隅にはあったんですけど、それを認めたくなくて、数か月が過ぎて行きました。
― それからどうなったんですか?
利益を上げることができなくて、仕事がほとんどない状態になりましたね。
フルコミッションなので当然給料もない。そのうち、ガソリン代も払えなくなってしまって、営業も行けない。営業に行けないと仕事もない、という悪循環。
完全に八方ふさがりで、家にこもっていました。
昼まで寝て、インターネット見て、ビール飲んで寝る、みたいな。
― そんな生活からどうやって抜け出したんですか?
旅行会社の繁盛期の9, 10, 11月に他の会社でアルバイトみたいなことをやって、少しお金を稼いで、「またやってみよう!」と思ったんです。
でも、もう認めるしかなかった、今までのコメツキバッタの「見積もりだけもお願いします」という営業が通用しないということを。
その事実を認めるまでに3月から12月までの9ヶ月の時間がかかったわけです。
「あなたレター」を知って一人ひとりに手渡しで配った!
― それを認めて、今度は何をやろうとしたんですか?
本屋に行って営業の本をさがして、目に付いた本を何冊か読んだんです。
そこで、「なぜか挨拶だけで売れてしまう営業法」を知ったんです。
「あなたレター」は明日からでもできるな、と思ったので、とにかくやってみよう、と。
― それで「あなたレター」を今年の1月から始めたんですね。
はい。見よう見まねでとりあえず作って、以前のサラリーマン時代のお客さんで、人間関係ができていると思われる人たちをリストアップして80人ほどに手渡しで配りました。
2ヶ月目に100人に増えて、3ヶ月目には130人に増えました。
それで、2月くらいから仕事が発生してきて、4月には利益が前年比5倍になりました。
― でも最初の1ヶ月は不安だったんじゃないですか?まるまる1ヶ月既存のお客様に「あなたレター」を手渡しするだけで、終わったわけですから。
いえ。今まで私自身がお客さんとコミュニケーションをとってきてなかったのが、取れるようになったのでそれが嬉しかったですね。
今までと違うのは自分のことを話して、お客さんの話を聞いて「ああ、そうなんですか」という(合いの手のような)言葉が出てくるようになったんです。
今までは、とにかく(見積もりを出させてくれ)とお願いに行っていた。
それだけの付き合いしかなくて、見積もりを出させてもらって、旅行を受注したらおしまい、そしていくら儲かった、と。
でも、今では2~3人の旅行でも、ありがたいと思えて、その人のために見積もりを作るのが楽しくて。お客さんの笑顔を思い浮かべながら、見積もったんです。
― 業者さんを叩いて利益を上げてきた方法は同じなんですか?
それが、自然と変わったんですよ。業者さんの提示してくる金額でやってもらって、その代わり食事の内容とかを細かく打ち合わせして。
お客様がいい旅行で、美味しいものを食べていただくように見積もりをして、(業者さんにもその方向で)お話をさせていただくようになりました。
業者さんから、「高柳さん、変わりましたね。つきものが落ちたみたいに穏やかに営業している。」とうちの社長に言って帰った人もいたらしいです。
前は、業者なんて脅かしてナンボみたいに思っていましたが、今は私の仕事を助けてくれるありがたい存在と思えるようになりました。
人と人との触れ合いが自分自身を変えた!
― 何かえらく人間が変わりましたね。
ええ、ほんとに。仕事に対する面も変わりましたし、家族に対しても変わりました。
家でも怖い顔をしていたのが、素直にふるまえるようになりました。
弟夫婦の子供とも遊ぶようになったりして。
― 何が高柳さんを変えたんですか?
人と人が触れ合うのを第一に考えて、仕事をやるようになったからでしょうかね。
家に帰れば、家族との触れ合いも、人と人との触れ合いですから。
― 昔は契約をとって業者を叩いて利益を上げるということに、快感を感じていたんですよね。今は何が快感に変わったんですか?
お客さんとコミュニケーションが取れるということは、私自身がお客さんを認めるということもあるんですが、お客さんが自分の存在を認めてくれているわけです。それが嬉しいんですよ。今は喜びを持ってハードワークをしています。
「あなたレター」を始める時に、(配る方の)名前をリストアップしたんですが、その時に、「ああ、僕はこの人たちに生かされているんだなぁ」と思ったら、その名簿を抱きしめたくなってしまって。
その中で僕は生きているんだ、と思えるようになったら、(次は)この人達を(感動させて)泣かせてやろうとか、そういう考えをしてくるようになるんですよね。
― 最後にこのCDを聞いている方へ、引き寄せ営業になるためのアドバイスをしていただきたいのですが…
自分をさらけ出すのが一番いいですね。自分の弱みも、全部お客さんにさらけ出して、業者にさらけ出していったら、上手く回りだした。だから、昔は天狗だったと、間違っていたんだと、素直に言えるようになったんですね。
― お客様と直接触れ合うことで、いろんなものが見えてくる。「こういう事を言ったら、お客様は喜ぶんだな」「こういうのをお客様は欲しがっているんだな」ということが、分かってくる。
一度どん底を経験した高柳さんが自分の間違いを認め、人との触れ合いの大切さに気付いた時、自然と仕事も上手くいきだした。
モエル塾メンバーから勇気をもらって、自分をさらけ出すことができるようになったと言う高柳さん。
売り込まないと売れないんじゃないかと思っている方も、全てをさらけ出す勇気が持てるようになってお客さんと接することで、高柳さんのように引き寄せ営業ができるようになるんですよね。
高柳さん、今日はお忙しい中、本当にありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございました。