26年間続けていた整備の会社が、この5年間は赤字が続き。ニュースレターなどでお客様の方から買いに来くるようにと試みたが赤字から脱出できなかった。それが車検の継続率がアップするだけでなく、新車台数が2倍も売れるようになり黒字化に成功した。驚くことに、自身の仕事量は減ったという。
なぜ?その秘密を中西さんに伺う。
目次
赤字解消のためニュースレターを出していたが、『あなたレター』の存在を知った。
― 中西さんのお仕事の内容を教えていただいけますか?
車の整備、車検や修理や板金などを主に、あとは頼まれれば新車や中古車の販売もします。社員は、事務員が1人、整備工場に3人、あと営業兼工場長が1人、それと私を入れて7人でやっています。
― この5年間赤字続きだったということですが、その赤字を解消するために何か行動を起こしたりしたんですか?
お客さんが向こうからやって来てくれるような会社にしたいというのが、前から思ってたんですよ。前にある人に、新車を年間10台だよ、と言ったら、「売れるのと、売るのは違うんだよ」ということを言われて、「売るのが力なんだ」ということを言われたことがあったんですよ。
それは違うんじゃないかな、とずっと思っていたんですよ。営業に出るのはどうしても抵抗があったし、お客さんの方からきてくれるような会社にずっとしたいと思っていたので、ニュースレターを前からやっていたんです。実は20年くらい前なんですよ。
だから赤字になっても、続けていました。でも自分で書くとなると書くことがなくなって1年に1回とか2回になってしまっていたので、ニュースレターのひな形を買って、それからは毎月出していました。
でも、だんだんひな形の内容を自分の内容に変えていくようになって、そうなると毎月払っている情報料ももったいないな、と感じるようになって・・・。
そんな時、あるメルマガに木戸さんのことが載っていたんですよ。
― それでモエル塾を知ったんですね。どういうところに興味を持ったんですか?
自分だけでニュースレターというか『あなたレター』を書けるところと、あとそれを添削してくれるところ。その次に“みとめ”とか「なかなかいいことを言っているな」と思って。それにほかの方の『あなたレター』を見たり、自分のもいろいろと言ってもらえたり・・・。それでモエル塾に入ろうと思いましたね。
日報や朝礼を始めたら、自分と社員との関係、また社員同士の関係も良くなってきた。
― そしてモエル塾に入っていろいろと手がけたことを詳しくお聞きしたいんですが、まず日報についてお話しください。
私の考え方をみんなに知っておいてほしいしということで、日報という形で一人1冊ずつノートを与え、好きなことを書いてもらうようにしました。そして私が週に1回か2回見るということにして・・・。
でも、社員が書いてきたことに対して私がコメントしているので、結局交換日記のようになっていますね。
中には、心の中にこんなことを抱えているんだ、と思って、二人でじっくり話す必要があるな、と思って食事に誘ったりして。
― 最初に日報を始める、と社員に言った時はどんな感じでした?
「また社長、変なこと始めるな」って半分あきらめのような感じで受け取ったと思うんですが、最初のうちは淡々と“こういうことをやりました”と書いてきてました。
でも面白くなかったので、途中で「何でもいいから、書いて」と言ったら、いろんなことを書くようになってきましたね。
― 次に朝礼について、教えてください。
以前から朝礼はやっていたんですが、木戸さんに「マンネリ化している」と話したら、“Good & New”ということで「昨日あった良かったことを発表しましょうよ」と言われてそれを始めたんです。
「昨日は嫁さんがいなくてゆっくりできて、よかったです」というような簡単なものなんですが、それを聞くことによって、その人の家庭の中が見えてきて、それが見えることによって、人当たりが違うというか、同じ指示を出しても失敗しても許せちゃうというようなことがあるような気がしますね。
社員同士の関係も親しみがわいてきて、みんな丸くなったような気がします。
― 日報をやることによって、一人の深いところまでが見えるようになってきて、そして朝礼で昨日のいいことを話すことによって、全体で一人のいろんな考えていることや良かったことを共有できて、社内の笑顔が増えてきた、雰囲気がよりよくなってきた。
そうですね。うちはよく集合写真を撮るんですが、前は一人や二人はブスッとしていたんですが、今はみんな笑顔が出るようになったんですよ。
2種類の案内レターを出すようになったら、売り上げが上がった。
― 他に案内レターづくりもやったんですよね?
中古車の案内レターと車検の案内レターの2種類を作ったんですが、車検の案内レターは季節ごとのあいさつ文にして、3つの安心とか、やはり値段とか商品の魅力じゃなくて、「車検を頼むよ」という一歩階段を上りやすくするような感じで、作りました。具体的に言うと、最初は「何月何日車検ですよ、諸費用はいくらかかりますよ、こんな割引特典がありますよ」と書いていたんですが、今は「1か月前に予約をいただくと1000円割引します」という案内レターにして、それに連絡いただけなかった人にはこちらから電話するようにしました。
― こちらから電話すると、数字は伸びたんですか?
はい。前は継続率80%ぐらいだったのが、今は95%くらいいっていると思います。
こっちも1か月前の予約だと割引をすると案内したので、それを忘れている方には電話するのが良心的だと思うし、そうすると「今、違うところからも話があるけど、でも頼むわ」とかなりの確率でいただけるようになりましたね。
― すごい数字ですね。ツールにプラス電話をしたことによって、これだけ引き寄せがでたんでしょうね。中古車の案内レターはどうですか?
中古車の案内レターは買っていただいたお客さんを真ん中にして、社員みんなで手をビラビラとして、そんな写真を撮って、載せたんですよ。
それがどういう風に影響しているのかどうかわかりませんけど、もともとうちは中古車販売の方がメインだったんですが、今年の後半は新車が売れるようになったんです。
中古車も今まで通りなんですが、新車はなぜかすごく売れているんです。
紹介とか整備では付き合いがあるけど、車を買ってもらうのは初めてという方から声がかかるようになりましたね。
― メーカーより8万円くらい高いのに、中西さんの方から買ったという方もいるとか。
「なんでうちから?」と思いましたけど、最初はメーカーの方が高かったみたいですが、年末ということでどーんと下げてきたみたいなんです。でも「こっちで頼むわ」と。
3,4か月前に紹介で来てくれたお客さんで2回くらい整備させてもらったんですが、他のうちでは見てもいない車検が切れる車を台替えするというので、うちから買ってくれたんですよ。
― 「チラシ」と呼ばないで「案内レター」というのは、“こんなにいいですよ、安いですよ”とモノをアピールするスタンスではなく、お客さんとの関係づくりができて、お客さんは何を欲していて、どんな喜びの言葉をいただいて、お客さんとのどんな関わりに嬉しさを感じて、そのお客さんとの喜びを写真に収めるのが案内レター。中西さんの案内レターを見た時に、お客さんとの関係や会社の方向性に心が温まるというか、そこが伝わったのかな、と思ったんですよ。
結果的にそうなっているのでそうなんでしょうね。
時間に余裕もってお客様と雑談をしたら、
売り上げにつながるようになった。
― 増収増益の秘訣は他に、店長も中西さんも時間ができたことによるんじゃないかと思うんですが。
整備の方からフロントへ一人回したので、私と工場長の仕事も一部フロントマンに任せるようになったんです。そしたら二人とも仕事が暇になって・・・。
― そのフロントの方というのは、板金をやっていた方だったので、その仕事を外注に出すようになったんですよね。そうすると利益が減りますよね?
かなり1/3くらいしか、なくなったんですよ。
それがさっき話をしていてそんなに上がってないんだけど、少しく良くなったかな、と思っていたんですが、かなり上がっているんですよね。
― 時間が余ったことによって何かいいことがあったんですか?
私と工場長の時間がたっぷりできたことによって、お客さんが来ると仕事の話はフロントマンがいるので、私は世間話をしているんです。
それも切羽詰った仕事を持っているわけじゃないので、気持ちに余裕を持ってお客さんと話ができる。
工場長ももともとお客さんに奉仕するタイプなので、時間に余裕ができてお客さんと思い切りかかわっている感じですね。
オイル交換だけのお客さんの車でもピカピカに磨いたり、「すぐ行きます!」とニコニコして伺ったりして、お客さんにすごく慕われてますね。
― モエル塾に入って、振り返った時に何が一番良かったですか?
もちろん『あなたレター』も大事なんですけど、みとめが一番大事、お客さんもだし、社員も自分も。あとものすごく大きいのが、モエル塾メンバーの取り組みがすごく為になりますね。こうやってみんな苦労しているんだな、という仲間意識というのが。
― 最後に中西さんのようにずっと赤字続きで悩んでいる方にアドバイスするとしたら何と言いますか?
遊びというか、少しゆとりを持って作るように頑張ってください。それがいいような気がします。ゆとりというのは大事だと思いますね。
遊びって文面もだけど、すべてのことに無駄なことって大事なんだな、と思います。
― 結局うまくいかない時って必死になるじゃないですか。必死になってうまくいくかといったら上手くいっていないんですよね。必死な時って視野が狭くなっているので、車の運転も視野が狭くなっていると必ず事故りますよね。
遅くてもいいから、視野が広いといろんなものが見えたりとか、発見があったりとかいろんなものが見えてくるんですよね。
どうしても落ち込んでいるときは仕方ないと思うんですが、やっぱり諦めないというか少し鈍感になって「何とかなるさ」というのもある意味、大事だと思いますね。
― 今日のお話の中で中西さんの行動というのは、まず社員に目を向ける、そして今いるお客さんにもっと深く目を向ける、この二つだと思うんですよね。
既存のお客さんと社員に目を向けるだけで、こんなに変わるんだよ、というお話でした。中西さん、ありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございました。