成約率44%が92%になった! なぜか挨拶だけで売れてしまう営業法

呉服の営業を始めて2年目、成約件数が1年目のときの半分に落ちた。社内にいるトップセールスの先輩に教えてもらっても、天才級でとても真似ができない。営業を始めて3年目、なんとか結果を出さなければマズイと焦る吉岡さん。

そんな状態にあったのが、売り込みトークなし、挨拶をしただけで来店者数が増え、成約率44%だったのが92%にアップした。その秘密を吉岡さんに伺う。

目次

呉服の営業を始めて3年目だが、成績は思うように上がらなかった。

― 吉岡さんは呉服の営業ということですが、どういうやり方なんですか?

100%個人宅の訪問ですね。会社から着物を過去に買った人とか、来年成人するお嬢さんをお持ちの方とかの名簿をもらうので、それに基づいて月に1~2回お伺いするんです。自分は130件渡されています。

― 吉岡さんの会社の知名度は、どうなんですか?

地域密着型の会社ですから会社の近くだと知れ渡っているんですが、私の担当の吉田町というところでは知名度はないですね。他のライバル社もありますし。

― 会社には営業マンは何人いるんですか?

全部で10人くらいです。10年20年とやられている方は、お客さんをたくさん持っていて、トークが上手なんですよ。自分で振袖を販売してそこからのお付き合いですから、すごくコミュニケーションが濃いんですよね。

そういう先輩は会社のすぐそばが担当エリアだったりして、知名度も浸透していますし、でも新人はあまり会社名を知られていないところからスタートさせられるので、どうしても厳しいんです。

― そういう先輩に営業のコツを教えてもらったりはしなかったんですか?

そういう先輩は顔が広いので売れているというのもありますし、トークがものすごく上手で、なかなか真似できない、体系化できない感じなんです。根性論、大好きみたいな方なので、教わるといってもなかなか・・・。

モエル塾に入って、「ヒトとヒト関係作り」のポイントを学んだ。

― モエル塾に入って、10か月くらいですが、入ろうと思ったきっかけは何ですか?

モエルさんで教材を買っていたんですが、これをもうちょっと腰を据えてやりたいと思ったのと、社外の人に相談できるのはいいな、と思ったことですね。

木戸さんのことは10年くらい前から知っていたんです。その時はコンビニの店長だったんですけど、その時にも『あなたレター』らしきものはやっていたんです。

でも顔写真を載せておけばいい、というレベルで。だから営業をするからには、もうちょっとポイントを押さえてやらないといけないなと思いました。

― モエル塾のことを10年も前から知っていて、それまでは入ろうと思わなかったのはなぜですか?

その時はコンビニの店長でしたから、それで入っても・・・と思ったんですね。

呉服の営業を始めてからも、レターをとりあえず書けばいいのかな、と思って。でもやはり相談する人が欲しかったですね。それにみなさん、思った以上に楽しそうでしたし。

― 教材を買って何か効果はありましたか?

いえ、レターを始めてすぐ先輩に反対されたんですよ。それでこの会社のルールに基づいて1年はそれに従いました。でも全然ダメでした。

去年のお正月の晴れ着の商戦でも来場率も成約率もすごく悪くて、その時に自分は売込みに走っていたなと反省したんです。

それで『あなたレター』のことを思い出して、会社の専務に相談しました。「こういうのをやりたい」と。

そしたら「俺が許可してあげるから、やんなさい」と、力強い言葉をもらったので、反対された先輩に秘密で始めました。

― 個人宅を訪問して、お店にお誘いし成約をとるという感じなんですね。

はい。でも去年の数字は成約率が44%ですから、冷やかし程度のお客さんが多かったのかもしれません。お店に来てくれる方も今の2/3ぐらいでしたから。

― 『あなたレター』はお客さん宅を訪問した時、渡すんですか?

はい。「僕、こんな新聞を作っていまして、ご縁をいただいた方にお渡ししています。笑顔になっていただけたら嬉しいです。」と、壊れたレコードのように同じことを毎回言ってます。

レターを手渡しして挨拶だけで帰るようにしたら、お客さんの表情が変わってきた。

― 以前に作っていた『あなたレター』とモエル塾に入ってからの『あなたレター』とでは、お客さんの反応は違ってきましたか?

はい。より笑顔が増えましたね。

以前の『あなたレター』はただ笑顔の顔写真をボンボンと貼っておけばいいんでしょ、という感じだったんですけど、モエル塾に入ってからは、感情の動きをレターに落とすことを学びました。

そういうものを取り入れた『あなたレター』に変わってからは、玄関を開けた瞬間に「また、来たね」と笑顔を見せてくれるんですよ。

以前は「また、来やがった」という感じでしたが(笑)。

― 訪問の目的はどう言っているんですか?

以前も今も、最初にするトークは「お嬢様の間もなくのご成人、おめでとうございます。いろいろカタログが届いていると思いますけど、うちの店も晴れ着選びの選択肢の一つに加えていただけたら幸いです。」と、そこは共通しているんですけど、以前はその後にけっこうガッツリ「うちのお店はこんな特典がありますよ」と言ってました。

それを言うのが早すぎたんだなと気付いてからは商品説明は一切やめて、挨拶だけにしたんです。もっと基礎の人間関係づくりをやった方がいいんだろうな、と思って。

― 挨拶だけしてすぐ帰ったら、いつまでたっても契約にならないんじゃないですか?

例えば、よそのお店で50万くらいで売っている振袖のフルセットがうちでは30万なんですが、そういうのも言わないようにしたんです。言いたいんだけど、「言っちゃダメ」と抑えて。

会う回数を重ねてからそれを伝えるというように180度やり方を変えたら、売れるようになりました。

― お客さんにも変化があったんですか?

最初のうちはお客さんの表情とか読み取れなかったんですけど、2回、3回、4回と回数が上がってくると、挨拶だけして帰ってもこのお客さんは『あなたレター』を読んでくれているんだなと、親しみを持った表情になってくるのが分かるようになりました。

12月は10日1回くらいの割合で行くんですけど、最初は口角が上がってない感じなんですけど、4回目くらいになると徐々に口角が下がってきて、「あっ、このお客さんはお店に来てくれるな」と思うんです。

実際に成約のタイミングで「『吉岡くん通心』は見てもらえました?」と聞いてみると、「見てるわよ」と言ってくれますね。

お客様との「ヒトとヒト関係」ができると、会話もリラックスしてできるようになった。

― 誘わなくても来場してくれて、成約になるなんて本当にラクしてますね。来場した時の接客も変えてるんですか?

あえて変えてはないですけど、やっぱりレターを通じて仲良くなっている分、以前よりフレンドリーに販売できていると思います。

レターに「キシリトールガムを2つ噛むのはおかしいと母親に言われて」と書いたことがあるんです。

そしたら「吉岡さん、私も2粒よ」とお客さんの方から声をかけられて(笑)

― そういうどうでもいい話に人って反応するんですよね。さすが吉岡さん!上手です!

販売の時とかも「吉岡さん、この金額じゃうちは厳しいんですよ」と、もうコミュニケーションを取れてるから「僕なんか母親に言われてキシリトールガム1粒で我慢しているんですよ。」と言ったことがあるんです。

すり替えにもなっていないんですけど(笑)そうしたらお客さんは、「そうだわね」って(笑)

― そういうギャク的ことは、昔からしゃべったりしていたんですか?

いえいえ、全然ですよ。やっぱり向こうが親しみを感じてくれているだろうと、しゃべりやすくなるんでポロっと出てきたというか。まあ、親しみを感じてくれているという勘違いもあると思うんですけど(笑)

― それは本当に素晴らしいです!  

最後に、これを読んだ方が「そのやり方では結果が出るまで1年以上もかかってしまうのでは?」と心配していたら吉岡さんは何と言いますか?

とりあえず、やってみてくださいと。人間関係の土台がしっかりできていれば、ちょっと強引に言っても受け入れてくれます。

でも、それが早いタイミング、つまり人間関係の土台ができていないのに、売り込みをしてしまうと失ってしまうお客さんの方が多いんです。

3回、4回行けば、確実にお客さんの顔は変わってきます。

― 一切売り込まないで挨拶だけで帰ってくると。こんなに楽な方法で売れるんだったら、、みんな呉服を売りたくなってきますね(笑)

僕もモエル塾に惹かれて営業職も楽しそうだなと思って、営業を始めた一因になっているんですよ。

― それは面白い動機ですね。今日の吉岡さんのお話は、関係づくりこそが大切なんだということがすごく伝わってきました。今日は本当にありがとうございました。

こちらこそ、ありがとうございました。